学長の趣味:観世流の能楽について
【11.12.09】学生支援センター 先日リクルートから出版されました『2012年度版 社会人&学生のための大学・大学院選び』の「大学トップインタビュー」に、本学学長のインタビューが掲載されました。その経歴欄に「観世九皐会理事」と記載がありました。そこで今回は、観世流の能楽についてお伺いしたいと思います。
学長 『2012年度版 社会人&学生のための大学・大学院選び』のインタビューの際にお越しいただいたカメラマンの方が、偶然、能面の写真を撮ることに関心をお持ちでした。それで、私の趣味が能楽だと知り、興味を持っていただいたようです。
能楽の主役であるシテ方には、観世流、宝生流、金春流、金剛流、喜多流がありますが、一番大きいのが観世流です。観世流は、観世会 (宗家、家元のこと)、銕仙(てっせん)会、観世九皐(きゅうこう)会、という三つの会に分かれています。私は、その中の観世九皐会の理事を務めています。この九皐会は法人ですが、今は法人改革でどこも大変なんですね。そこで、私は法人改革の方面について多少知識があるということで、理事を仰せつかったわけです。
私が能楽を始めて、かれこれ約30年になります。昭和54年に始めましたので、今年で32年目でしょうか。観世流には、「内外(うちそと)210番」の演目があります。普通、「内100番、外100番」と言いますが、実際は210番あるんです。昔は、大名家が能楽師を抱えていたのですが、「内100番」というのは、演じるよう命ぜられたらすぐに演じることができないといけない曲でした。一方、「外100番」というのは、2~3日の時間をもらって演じる、少し遠い曲でした。その210番を、一応全て習いました。210番全てを習った人というのは、素人にはあまりいないようです。また、能の基本的な型をとったものを「仕舞(しまい)」といいます。この「仕舞」についても、主なものはほとんど稽古しました。
そういった話をしたところ『2012年度版 社会人&学生のための大学・大学院選び』の経歴欄で、取り上げてくださったわけです。
学生支援センター なるほど。「観世九皐会」という名称など、初めて伺いました。
学長 日本の場合、日本人の源流のようなところにあまり目が向かないのかもしれません。例えば、イギリスの場合ですと、シェイクスピアの作品に出てくる言葉などは、いろいろなところで使われています。それに比べて、日本では能といっても知らない人がほとんどですね。これからの時代、それではいけないのではないかと思います。海外の方から「能とは何ですか」と聞かれたとき、何も分からないようでは困るのではないでしょうか。
完全に細かいところまで調べつくすということはなかなかできないので不十分ではありますが、それでも、例えば卒業式のときなどに能から引用した言葉をちょっと入れたりしています。例えば、「「智者は惑わず、勇者は恐れず」と言いますので、皆さんもこれから頑張ってください」など。教養として、少しは日本のことを知っていなくてはいけないのではないかと思いますが、そういう点でもとても役に立っています。
学生支援センター 30年続けられている、というのはすごいですね。
学長 でも、能楽のプロの世界では、「四十、五十は鼻たれ小僧」といいます。六十代ぐらいから、やっとまあまあになるということでしょうか。継続して稽古を積み、芸を磨いていかなくてはいけない、厳しい世界だと思います。私は、九皐会を主催している観世喜之(かんぜよしゆき)師の甥にあたる弘田祐一(ひろたゆういち)師に師事して、約30年間稽古をしてきました。最近は忙しいせいもあり、稽古には月に2回行ったり、行かなかったりですが、素人は素人なりに、なかなかつかめない奥の深い世界だと感じています。
能というのは、力が必要なんですね。動きを極端に単純化していますから、力がないと不要に動いてしまい、みられたものではありません。そのため、非常に力が必要となります。ですので、能の稽古は、体にもとても良いですね。
学生支援センター 学長のお元気の秘訣、でしょうか。そもそもは、どういうきっかけで始められたのですか。
学長 昔、NHKの大河ドラマで織田信長が「幸若舞(こうわかまい)」の「敦盛」を「人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり、一度生を享け、滅せぬもののあるべきか」と謡いながら舞うのを見て、こういうのをやれたらよいがとつぶやいたら、いつの間にか、能を習うように仕立てられてしまいました。ですから、何も知らないままに入門してしまったわけです。
でも、何も知らないというのは師匠からするとよいみたいです。どこかで習っていて癖がついていると、その癖を取るのが大変らしいんですね。何も知らないと、師匠の言うとおりにやりますから、よいのだと思います。
学生支援センター きっかけは、大河ドラマだったんですね!最後に、210番ある演目の中で、お気に入りの曲などがあれば教えていただけますでしょうか。
学長 そうですね。「修羅もの」ですかね。修羅場の修羅ですね。「修羅もの」というのは、演じていて「これはすごい」と感じます。今、三修羅の1つ「頼政」の復習をしていますが、争いで敗れて死んでいく場面では、真実に迫ったものがありますね。
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①謡本「頼政」表紙
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②謡本「頼政」の一部
かつて、能は一般人でも知っていたものでした。それが、明治維新によってなくなってしまったのは、とてももったいないと思います。でも、最近は、若い能楽師の方が大変元気で、解説をするなどいろいろな新しい試みをしています。その効果もあってか、男女共に若いお客さんが増えてきました。これからが楽しみですね。そういった努力は、大学としても見習わなくてはいけないところだと思っています。










