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藤森純一の研究室便り

第45回中小企業問全国研究集会~中小企業憲章にそった税制への転換を~を受けて

2015/03/15

2015年3月5日、6日にパシフィコ横浜にて、
『第45回中小企業問題全国研究集会』が開催されました。

「消費増税による反動減や原材料高・電力料金アップ等による収益圧迫、人手不足の懸念、さらには中小企業への外形標準課税導入の動き等、私たちを取り巻く環境は厳しさを増すばかりです。しかし上記に掲げた企業づくりに挑戦していくことで、中小企業が生き生きと活躍できる地域や社会を築いてい」(第45回中小企業問題全国研究集会リーフレットより)くという思いでの開催です。


本集会は、中小企業家同友会全国協議会が主催、神奈川県中小企業家同友会が設営を担当しています。


本集会は18の分科会に分かれ、それぞれ現在の中小企業を取り巻く問題についての報告及び参加者によるグループディスカッションが行わました。


私が参加した第15分科会は「中小企業憲章にそった税制への転換を」というテーマの分科会です。今回のブログで、本分科会の内容と、私見をまとめてみようと思います。


1 日本の税金の現実と税制への提言


税理士法人アルファ合同会計・菅隆徳氏。菅氏より、日本の税金の現実についての解説が行われました。


国税庁の資料より、資本金階級別の法人税負担率(2012年度)は、資本金1億円超え~5億円が最も高く(27%)、資本金が5億円越えでは、法人税負担率が低下している現状があることが分かった(資本金1000万円以下では、22.6%、100億円越えは19.6%となっている)。
さらに、連結納税を適用している大企業では、13.3%の負担率となっている。


また、消費税に関しては、庶民と中小企業は消費税を転嫁できない現状と大企業は免税と戻し税という現状があるということも解説があった。


大企業優遇税制の実態と適正課税への提言として、

・大企業の内部留保を活用した賃上げ、下請け単価の改善
・中小企業支援と一体となった最低賃金の引き上げ
・消費税増税の中止

により、社会保障の充実など、国民の所得を増やし、家計を温め、消費と需要を活発にして経済を立て直すことというものでした。


2 憲法から税制を考えてみる

憲法の視点から考えてみたいと思います。

税制は日本国憲法で「租税法律主義」という考え方が採用されています。
租税法律主義とは「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律または法律の定める条件によることを必要とする」(憲法84条)という考え方です(芦部信喜『憲法』[第5版]349頁参照)。


この租税法律主義は、
憲法83条で規定する「財政民主主義」の一環としても捉えられています。


そして、財政民主主義と租税法律主義は、租税が個人の財産権を侵害する危険性があり、加えて、徴収手続きには権力的要素が強く、国民の権利・自由に対する脅威となりうることから規定されたものです(水野忠恒『租税法』〔第5版〕参照)。


すなわち、租税負担については、少なくとも国民を代表する機関である国会の承認を必要とするということを意味しています。


3 税負担の変更を求めるには?


税制の変更は、増税(税率・税額の上昇)と減税(税率・税額の下降)があります。


そして、減税についても財政民主主義租税法律主義の考え方が妥当します。


なぜなら、減税であったとしても、全ての国民の利益になるとは限らないためです。
本分科会の報告された現状が具体的な例となるでしょう。つまり、大企業にとっては利益だが、中小企業にとっては利益につながっていない(つながりにくい)という現状です。


減税にせよ、増税にせよ法律によらなければならいという点では変わりはないということです。そして税制の内容について、税負担の不平等の問題が生じます。


4 税負担の平等って?

憲法14条で「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定しています。


この平等権を根拠に税負担の平等が導かれます。


そして税負担の平等という点で、次の判例が参考になります。


旧所得税法で、給与所得課税について、事業所得者に比べて給与所得者に著しく不公平な税負担を課している(事業所得者等と給与所得者との間の所得捕捉率の較差など)として争った事件です。

この事件で判例(最大判昭和60・3・27)は、
「立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することはできない」として、この税制度を違憲ではないと判断しました。


また、租税法の定立については、財政民主主義と租税法律主義があるが、国会の政策的・技術的判断にゆだねるほかないともしています。

この判例からは、税制については「広い立法裁量」が認められ、平等権を侵害するといえる税制となるには、立法目的との関連で「著しく不合理であることが明らか」でなければならないということになります。


5 中小企業家は税制への転換へ向けてどう動くといいのか?

・平等権
・財政民主主義、租税法律主義という仕組み
・租税法の定率は政策的・技術的で国会の広い裁量がある

さらに、先の判例から
・立法目的の正当性の有無
・採用された税制が著しく不合理であること

という点についても考えなければなりません。


中小企業家は、憲法からVisionと法制度のシステムを知り、中小企業基本法、中小企業憲章に描かれた社会(大企業も中小企業もバランスが取れた社会)を考えどう実現していくか?という大きな視点から、税制の合理性について検討を重ね、連携して動くことが求められるのではないでしょうか?

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