vol.9
『本校の教育と進路』

2010/06/07

-本校の教育と進路-

進路ガイダンスを作成しました。進学・就職の2つをまとめ、福祉的就労のことや年金申請のことまでまとめた資料も掲載しています。
これは本校の進路指導がその人に「あてがう」指導ではなく、「ここで学びたい」「こんな仕事がしてみたい」と言う本人が次の進路を主体的に考え、自分と向きあっているかという問題を見据えているかを考えてのことです。
かつて本校の進路指導はありきたりの指導でした。7月に求人票を掲げ、成績により希望先を家庭で決め受験するというものです。申し訳程度に職業適性検査やクレペリン検査を実施していたもののその数値がだれほど参考になったかは疑問です。それよりも履歴書の資格欄を重視し、毎日毎日検定試験の勉強でした。かつての養護学校の作業学習と同じ視点です。
その両方の結論は就労後の離職率の高さでした。より早く社会に慣れるように・社会は厳しいから学校でも厳しく・福祉就労より一般就労・中小企業より大企業へ!
大人たちの勝手な願いでした。

生徒たちは今まで(中学校)に散々に厳しい環境の中で堪えに堪えてきました。ある生徒は厳しさから逃れる方法として「笑顔」でした。笑顔だと学校で殴られないからとポツリと一言が悲惨でした。家では何もしない子供でした。失敗すれば叱られ、勉強すれば「間違い」と言われ「どうして出来ない」と悲しい顔をされるからと言い、なにもしないと大人がやつてくれて、あきらめてくれるからでした。
この上にまだ本校で厳しくできるでしょうか。人生で一番輝く青年期、華やかで希望に溢れる青年期に、友達もなく暗い表情でいつも一人ゲームをしている姿を見て何のための、誰のための進路指導かと疑問を持つのは私だけでは無いとおもいます。
だからこそ本校の教育です。
進路(卒業)に備えてどんな人間にそだってほしいかと思う気持ちが本校の教育目標である「社会的自立」です。社会で一人で生きていくため力を持ってほしいと言う願いです。
そのためには一人ではない仲間がいて互いに認め合いながら一緒に学校で生活し、喜びや悲しみも共感できる人間でなければなりません。したがつて教育方針は「ともに学んで、みんなで輝く」になっています。どの人も互いに信頼し、尊重しあって友情を育み人の温かさを感じなければ社会に出る自信には繋がらないでしょう。
10年先を見通して本当に青年期で求められる力は何でしょうか。
就労のための資格でも、進学のための丸暗記でも、面接のためのハキハキ言語ですか。
就労は大事です。でも働く本人に生活している実感がなければ生活とはいえません。
自立の前に自律して生活を文字通り体験してから次の段階に進みます。この中には当然に楽しみもなければなりません。社会性なくしての就労は本人には辛いだけのものになるでしょう。それならば模擬社会である学校で沢山の失敗をし、自ら体験を重ね次に生かすことができるのです。本校の校訓「ゆっくり、ゆったり、回り道の教育」はそれを示しています。ゆっくり社会(学校)を見渡し、あせることなく自分を出して(ゆつたり)失敗しながら学んでいくことが大事です。
そんな経験を積んだ上で「ぼくはこうする」という自己決定する力が備わると確信しています。インクルージンな社会といい特別支援教育に転換されながら、分かりにくいハンデイであるLD・ADHD・ASDという人には現実は余り変わらないようです。
法定雇用率についても一定の数値は示していますが率よりも数よりも、なによりも働く本人を理解し、育んでくれる人々が必要ではないでしょうか。
この先、学年により具体的な目標・日程は異なりますが大事なことはまず本人を自由にということです。これから1年間保護者の皆様と、生徒・学生を中心に「ともに学んで、みんなで輝く」学校でありたいと強く願っています。

学校 長  谷  口    充